転職して3カ月で会社を辞めた話

転職して3カ月で会社を辞めた話
Photo by golchiki

転職して3カ月で辞めた実体験

僕は転職して3カ月で会社を辞めたことがある。

2015年にリクルートを辞めたあと、株式会社エス・エム・エスという会社に転職した。転職の決め手はオファー年収が高かったことと、一緒に働く人が魅力的だったことだ。

僕がリクルートを辞めた理由は2つある。看板の力が大きくて個人の力を感じにくいこと、もう一つは組織が大きく、動きが遅いと感じることがあったからだ。

転職エージェントから紹介されるまでエス・エム・エスのことは知らなかったが、面談に行くととても魅力的な企業だと感じた。

当時のエス・エム・エスはまだ200名ほどの規模で、売上を伸ばし続けていた。当時の時価総額でも650億近くあったが、今では2,500億まで伸びている。当時も今も、本当に素晴らしい会社だ。

役員にコンサル出身者が多いこともあり、論理的かつドライで判断が早く、上場企業であるもののベンチャー気質も持ち合わせていた。

カジュアル面談で好感を持てたため、すぐに選考に進んだ。オープンポジションで応募したため、さまざまな部署の人と面接をした。

面接の回数は他社に比べて多く、徹底的に思考を詰められた。なぜそう考えたのか、その成果に満足しているのか、より高い成果を出すには何をすべきだったと思うかなど、上司に詰められているかのような面接だったのを覚えている。

長い選考を経てもらえたオファーは「中途人事採用担当」のポジションだった。会社自体も伸びているし、優秀な人が多い環境には魅力があった。提示された年収も悪くない。

転職エージェントからも「エス・エム・エスは優秀な人が多いから、間違いなく次のキャリアにもつながるはずだ」と推しのコメントをもらった。

しかし、このオファーには迷いがあった。

これまで営業や渉外の経験を積み、事業に取り組んできた自分が、果たして管理部門でやっていけるのか?これは本当に歩みたいキャリアなのか?という迷いだ。

正直、とても悩んでいるということをオファー面談で伝えたところ、彼らは自分たちの人事戦略について詳しく教えてくれた。彼らは戦略的かつ論理的に採用を展開し、独自の採用を行っており、もはや営業と同じ考え方をしていた。これまでの営業経験も活かせる感じがして、少し安心したのを覚えている。

最後の最後まで迷いはあったが、人事というポジションなら、これまで経験してきた人材業界の文脈も活かせるし、次のキャリアでは管理部門の選択肢も持てるかもしれないと考え、内定を承諾した。

しかし、入社してすぐにこの選択について思い悩むようになった。

中途採用担当の仕事は、各部署において必要な人材要件を把握し、転職エージェントや転職サイトなどの各チャネルを通じてターゲットを集め、面接調整や年収交渉を行う。

当時のエス・エム・エスには数多くの事業があったため、まずはそれぞれの事業がどんなビジネスモデルなのかを把握し、どのような人材を採用するかの要件定義をすることから始めた。

各事業部の責任者に連絡し、打ち合わせを重ねた。僕は元々事業側にいたこともあり、ビジネス側の話にはとても興味があった。

打ち合わせを終えて自分のデスクに戻り、転職サイトの求人要項などを考えていると「採用の戦略やオペレーションを組むより、どう売上を伸ばすかを考えるほうが楽しいな……」などと思うようになり、早くもこの転職に疑問を持つようになってしまった。

また、採用業務において自分が苦手とする部分も見えてきた。僕は転職者と面接をして、優秀な人を口説く立場なのだが、どうしてもその人のキャリアに焦点を当ててしまい、面接というよりもキャリア相談になってしまう。この人にとって、本当にうちの会社がいいのか?と考えてしまうのだ。

複数の内定を持つ優秀な転職者に対しても「転職先の選択肢の1つとして見てください」くらいにしか提案できず、採用決定に至らないことが多かった。

終いには、僕が担当している事業の採用が一向に決まらないことから、各事業部がしびれを切らして部署ごとで採用を始めてしまい、僕の介在価値はほぼなくなってしまった。

気がつけば、ビズリーチでテンプレ的なスカウトメールを送り、転職エージェントと他愛もない話をしながら次の転職先を模索したり、会議でできるだけ存在感を消すような働き方をしていた。定時で帰るのが気まずくて、なんとなくデスクにいた日が増えていった。

入社から1カ月ほど過ぎたときのことだ。社長が直々に僕の上司のデスクにやってきた。

「新しく採用した中途採用担当の人って、何やってんの?」

指摘されても仕方がない。こればかりは力不足で、僕にはどうすることもできないくらいこの仕事が自分に不向きだった。

このまま長くいてもお互いに良くない。1カ月前に退職の申告をする必要があったため、入社して2カ月目の終わりに退職を申し出た。休みがちになっていたこともあって、誰にも引き止められることなくあっさりとした最後だった。

エス・エム・エスに転職したことを後悔したというより、エス・エム・エスに迷惑をかけてしまったという気持ちのほうが強かった。また同時に、迷いを持ったまま転職した自分の判断を悔やむ気持ちも強かった。

この経験をして以降、僕は少しでも迷いのある転職はやめるようにした。

もちろん、未経験なことに挑戦するのは必要だと思うし、自分が苦手だと思うことがやり方によって楽しくなることもあると思う。しかし、いずれにせよ「自分がどんな成果にモチベーションを持つか」という点だけはきちんと把握しておいたほうがいい。

僕の経験上、転職する際に確認すべきは「どんな成果を求められるのか」と「業務の中に自分が楽しいと感じられるポイントがあるか」だ。今回の場合、この両方が自分には向いていなかった。

環境や他人のせいにして会社を辞めるのは簡単だが、いつまでも他責にしていては、いい転職はできない。自分が何にモチベーションを感じるか、その業務に楽しいと思えるポイントはあるかを把握し、次に活かすことが大切だ。

個人的な意見だが、直感で少しでも迷いがあるなら現職に残ったほうがいいと思う。入社後に自分が選んだ選択肢を正解にしていく道もあるが、これは自分のモチベーションを上げる成果や楽しいと思えるプロセスが転職先にあることが前提だ。

いわゆる「いい会社」というのは、企業規模や年収の高さではなく、自分が楽しさを感じる部分との重なりが多い会社を指すのだと思う。サラリーマン全員にとっていい会社などない。

もし、今の仕事に悩んでいる人がいたら不満要素を探すのではなく、今の業務で何をしているときが楽しいと思うのかを考えてみるといい。ここを把握していることが、次の会社で活躍する大切なポイントになるはずだ。

もし転職に失敗したとしても、後悔ではなく、学びや糧にしていくことを意識してほしい。キャリアを実りあるものにするか汚点にするかは自分次第だ。

Q&Aコーナー

【質問】
大学3年生です。大学生のような経験や知識が社会人に比べて劣っている人間は、何をコンテンツにして価値提供し、お金を稼いでいけば良いでしょうか?

現在Webサイト制作で月20万ほど稼いでいます。稼いでいるとはいえ、これはいわゆる“外注されるためのスキル”であり、“自分で仕事を創り出す人間”ではないと、motoさんの記事を読み気付くことができました。

そのため、消費者の「財布を見つけて、お金を出させる」ために、noteなどでコンテンツを作り、消費者の財布からお金を出させるにはどんな価値提供ができるのかと常日頃考えています。

Web制作のスキルを身に付けた経験を書くのもありかと思ったのですが、すでに多くの方が書いているというのと『Web制作で月○万稼ぐ方法』のようなコンテンツは、自分の信用の切り売りだと思うのでやりたくないと思っています。

繰り返しになりますが、大学生のような経験や知識が社会人に比べて劣っている人間は、何をコンテンツにして価値提供し、お金を稼いでいけば良いでしょうか?

【回答】
どのくらい稼ぎたいのかや、将来どうなりたいかによるところが大きいですが「Web制作のスキルを活かす」という軸で僕の考えをお伝えします。

「労働集約にしない」という点においてはコンテンツという形でお金を稼ぐのが良いと思いますが、せっかくWeb制作のスキルを持っていて手元に仕事があるのであれば、僕ならその仕事の延長でお金を稼ぎます。

Web制作の単価を上げられるようなスキルセットを伸ばしたり、クライアントとの単価交渉、取引する会社のレベルを上げていくなど、自分の仕事に対する信頼値を高めることに注力すると思います。

自分の仕事に対する信頼値が積み上がっていけば、指名で仕事をもらえたり、リピートしてもらえるようになるはずなので、徐々に受注金額を上げつつ、自分以外の人間を使ってクオリティを担保する状態を目指していくのが良い気がします。

何事もそうですが、ラクしてお金を稼ぐことはできません。「自分がやってきた方法論」をコンテンツにしてお金を稼ぐのではなく「自分がやっていること」を伸ばしてお金にするほうが経験という意味でも資産になります。

信用と価値を高めるには、自分が得意な領域で泥臭く稼いでいくのが遠回りのようで近道になると僕は思います。大学生でこの視点を持てるのは本当に素晴らしいと思いました。ぜひがんばってください。応援しています。

コラムについて

ここでは筆者であるmotoが日頃思っていることを書いています。

主に転職やキャリアについて書いてます。更新は不定期ですが、僕なりの転職の考え方に関する内容を発信していきます。

本コラムに関するご意見・ご感想、転職に関する質問についても受け付けますので、 @moto_recruit や下記のフォームからお送りください。転職に関する質問には、コラムの最後でお答えしていきます。

転職活動について情報収集されている方は、転職サイト転職エージェントの記事もチェックしてみてください。

    執筆者・監修者のmotoについて

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    戸塚俊介。1987年長野県生まれ。地方ホームセンターやリクルート、ベンチャー企業など7社に転職後、副業の転職メディアを上場企業へ売却。現在は「転職アンテナ」を運営するmoto株式会社HIRED株式会社の代表取締役。著書に『転職と副業のかけ算』(扶桑社)、『WORK』(日経BP)がある。(有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-313037)。

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