会社を辞めて転職活動した話

会社を辞めて転職活動した話
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転職活動をするタイミングについて

「転職活動は、在籍中にやるべきですか?」という質問をもらうことがある。

僕の経験に基づく結論は、有給を使って休んででも「在職しながら転職活動をしたほうがよい」と思っている。

理由は2つだ。一つは、現職を辞めて時間を転職活動にコミットしたところで「転職活動へのモチベーションを保つのが難しい」こと、もう一つは、在職しながら転職活動をするほうが「心に余裕を持てる」からだ。

在籍しながらの転職活動は時間が限られてしまうため、動きにくいと感じる人も多いだろう。現職がつらいから辞めてから転職しよう、と考える人もいると思う。でもそれはちょっと待ってほしい。

僕は過去に、仕事を辞めて転職活動をしたことがある。

当時は営業の仕事をしていた。アポの合間に面接を入れて転職活動をしていたが、仕事が忙しくなると面接をリスケせざるを得なり、最悪の場合、ほかの人が先に採用されて求人がクローズしてしまうこともあった。

また、面接がある日にスーツを着て出社すると「え、今日外回りないよね?なんでスーツなの?」と上司に聞かれるなど、在籍中の転職活動の難しさを感じるシーンも多くあった。

目の前の仕事も大切だが、かと言って会社が自分のキャリアを用意してくれるわけでもない。とはいえ、コソコソと転職活動するのは現職に申し訳ないという気持ちから、会社を辞めて転職活動をすることにした。

無職になってからの1、2週間は忙しかった。複数の転職エージェントと面談をしたり、企業とのカジュアル面談が続いた。

しかし、徐々に面接数は減っていき、空き時間が増えるようになった。

転職サイトを眺めていても、いつの間にかTwitterを眺めていたりYouTubeで動画を見て気が付いたら夜になっているような生活に陥り、ついには「面接に行くのめんどくさいな」「スーツを着るのダルい…」と思うレベルにまでモチベーションも落ちた。

働いていた時は「時間がほしい」と思っていたが、いざ時間ができたら楽なほうに流れてしまった。会社に行かなくなったことで人と会う機会も減り、お祈りメールが続くことでモチベーションもどんどん低下していった。

在籍しているときのと最大の違いは“心の余裕”だ。

仕事を辞めて転職活動をしていると、転職に費やせる時間は増えるものの「早く転職先を決めなきゃ」という焦燥感が出てくる。

焦燥感は時間の経過とともに危機感に変わり、望んでいない企業からのオファーでも「もうここで決めてしまおうかな…」と考えるようになり、気が付けば「転職すること」が目的になっていた。

また、給与交渉の場面でも立場の弱さを感じた。

採用してもらえるなら年収はいくらでもいい、そう思うようになり、自分の市場価値云々なんて気にならなくなってしまっていた。

幸い、僕はこの期間に副収入をつくろうと考え、空いた時間を使ってSNSなどを始め、それがきっかけで転職することができた。でもきっと、あのまま転職活動を続けていたら、納得のいく転職はできなかっただろうと思う。

僕はこの経験から「転職活動は在籍しながらやったほうが良い」と思うようになった。転職活動で大事なのは、時間の余裕ではなく、心の余裕」だ。

今の仕事が忙しい、ということが理由で転職活動できないのであれば、無理やりにでも、有給を使って在籍しながら転職活動したほうがいい。現職でパフォーマンスを発揮しながら転職活動するのは難しい面も多いが、無職になって転職活動をするほうがリスクは大きい。

ちなみに、僕はこうした経験を通じて「今の仕事を辞めたくないとき」に転職活動をするようになった。

「売れるときが、売り時」という言葉があるように、「転職できるときが、転職どき」なのだ。もっと言うと「売りたくないときが売り時」という言葉と同じく、「転職したくないときが、転職時」だ。

仕事が勢いに乗っているときは「内定がもらえなくても、現職がある」という心の余裕が持てるため、採用側との交渉も強気に行けるようになるし、採用側にも「この人、イケてるな」という空気感が伝わる。これは逆も然りで、自分が弱気になっていたり勢いを失っていると、それも相手には伝わってしまう。

経験上、仕事や給与の不満を環境や会社のせいにして「仕事を辞めること」を目的に転職活動したり、「転職すること」を目的に行動してしまうと、いい転職をすることは難しいと思う。

繰り返しになるが、もし転職を考えている人がいたら、在籍中に転職活動することをおすすめする。少しでもこの経験が参考になれば嬉しい。

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転職活動について情報収集されている方は、転職サイト転職エージェントの記事もチェックしてみてください。

    執筆者・監修者のmotoについて

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    戸塚俊介。1987年長野県生まれ。地方ホームセンターやリクルート、ベンチャー企業など6回の転職を経験後、転職メディアを上場企業へ売却。現在は「転職アンテナ」を運営するmoto株式会社およびHIRED株式会社の代表取締役。著書に『転職と副業のかけ算』(扶桑社)、『WORK』(日経BP)がある。(有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-313037)。

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